2013年3月13日[火]~4月20日[土]
※好評につき会期延長しました。
◆12:00~20:00 ◆入場無料
◆会場 : ギャラリー新宿座
◆住所 : 東京都新宿区新宿4-4-15
※JR新宿駅「東南口」「南口」より徒歩5分。
◆TEL: 03-3356-8668
https://www.facebook.com/events/584177351607932/
●3/16[土] レセプションパーティー 18:00~20:30
常川博行氏×一夜限りのグランギニョルin新宿座
introduction
「人形は生と死の中間に存在する。」
2013年は熊本県天草出身の人形作家清水真理が、人形制作を始めて20年の節目の年にあたります。 西欧・東欧の宗教美術や日本の土着的文化を取り入れながら制作してきた作品のルーツを、学生時代のスケッチやアニメーション作品、20年間清水の作品を撮影してきた田中流の写真作品などの資料とともに振り返ります。
清水が思春期を過ごした1980~1990年代は、世紀末美術が多く紹介された時期でした。「メランコリー」の表現を展開していった象徴派、ラファエル前派などの画家ギュスターブ・モロー、ハリー・クラーク、クノップフ、また日本における世紀末芸術「大正デカダンス」の文学や絵画、江戸川乱歩、谷崎潤一郎、岸田劉生、甲斐庄楠音などの影響を受けながら、自分の作品スタイルを模索します。
バブルの崩壊や阪神大震災、オウム真理教による地下鉄サリン事件など、不安定な時代背景に作者が見た夢をフロイトやユングの著作を元に自己分析し、「蝶」「芋虫」「翼」「眼球」「アニマ」「顔のある花」「トリックスターとしての道化師」など繰り返し出てくる原型のイメージをモチーフに、平面、映像、立体として作品化することを試みます。
神は存在するのか? 幼少期より、宗教・哲学的世界を象徴的に描いたイギリスの詩人・画家のウィリアム・ブレイクの作品と思想体系に触れ、キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教、仏教などの宗教美術に共通する「有翼」「多肢」「複眼」「複頭」「両性具有」「半人半獣」をテーマに、聖人になぞらえた「聖書と木馬シリーズ」、実在の人物を元に架空のサーカス団として表現した「フリークスシリーズ」など。
作者の出身地である天草の隠れキリシタンの歴史背景から、「死」→「聖なる殉教」のイメージを重ね合わせ、ジョットやフラ・アンジェリコなどのルネサンス美術やカトリックの宗教美術に見る「トランジ」「トリプティーク(多翼祭壇画)」「聖遺物」をモチーフに取り入れたシリーズ。 また、仏教や西欧宗教、ダンテの「神曲」に見る天国・地獄のイメージを、人体の内臓に形象学的に置き換え、物質的肉体を精神世界の入り口として合一を試みる最新の作品群。
【写真展示】
田中流
日本写真芸術専門学校卒業。
青森を拠点に活動する劇団渡辺源四郎商店や東京・ 大阪で活動する虚飾集団廻天百眼などの舞台写真。
書籍として『Miracle ~ 奇跡 ~』人形:清水真理(書苑新社)『薄い街』佐藤弓生著(沖積社)『八 本脚の蝶』二階堂奥歯著(ポプラ社)ほか。その他展覧会・ワークショップ講師 など多岐にわたり活動中。
本展では、20年に渡って撮影した清水真理の人形作品約10000点から抜粋した写真作品を展示。
特別展示 「Doll・Perspective」
清水真理の人形作品を様々な表現の7人の写真家 による作品で俯瞰します。
<参加作家>
・Everett Kennedy Brown ・酒井孝彦 ・吉成行夫 ・中村矯
・GrowHair ・玉村のどか ・Barbara Cortilli (敬称略)
エバレット・ブラウン / Everett Kennedy Brown
1959年、アメリカのワシントン D.C.生まれ。
epa通信社日本支局長。ブラウンズフィールド代表。『Kyoto Journal』寄稿編集者。
1988年から日本に定住。国内の媒体ばかりでなく、『タイム』や『ニューズ・ウイーク』の各誌、「ニューヨーク・タイムズ」、「ロンドン・タイムズ」、「ル・モンド」の各紙など、欧米の主要なメディアで定期的に作品を発表している。
著書に『俺たちのニッポン』(小学館)『ガングロガールズ』(Koenmann)、共著に『生きてるだけで、いいんじゃない』(妻である中島デコとの共著・近代映画社)、『日本力』(松岡正剛氏との共著・パルコ出版)ほか多数。
吉成行夫
人物、人形、舞台、風景などを通して、幻想的、ダークファンタジーな表現の作品が多い。
仕事ではアドバタイジングならびにエディトリアルにおいて人物撮影がメインのフォトグラファー。
アーチスト、ミュージシャン、タレント、モデル、女優、小説家、企業人の撮影など。
人物以外では世界遺産や文化財の撮影、紀行写真、また商品や芸術作品撮影も。
東京出身。
中村 趫 / Kyo Nakamura
1949年 京都市生まれ。自称耽美系社会派写真家。
60年代後半に対抗文化の洗礼を受け、70年代には過激的ロックバンドのメンバーとして活動の後、1980年頃から写真制作を開始。
数々の展覧会や印刷物を通じて女性や関節人形をモチーフにしたダークでデカダンな写真作品を発表してきたが、2001年以降は廃墟化する社会の中で写真というメディアを捉え直し、自己世界の批評的相対化と世界のリアルへと関心を向ける。
酒井孝彦 / Takahiko Sakai
日本デザインセンターを経て、現在、東京工芸大学芸術学部写真学科准教授。
教壇に立つ傍ら奇才フォトグラファーとして精力的な作品発表を行い、多数受賞もし、注目を集めている。
2011年より個展「Crescent flower~絶対領域へのフェティシズム」「神の汚れた手」「Cocoon~フォルムへのフェティシズム」を立て続けに発表。
2012年12月には細心作品集「神の汚れた手」(オメガアルゲア刊)を発行。
GrowHair
本名: 小林 秀章。1962 年生まれ。
早稲田大学理工学部数学科卒、同修士課程修了。
現在まで印刷会社に勤務。
人形およびコスプレイヤーを主に撮影。
日伊文化交流イベント "Nihondo - La via del Giappone" Brescia 2006年
グループ展「幻妖の棲む森」 ヴァニラ画廊 2008年
グループ展「臘月祭」 Gallery 156 2009年
グループ展「The Other Side ~拘束と解放~」 パラボリカ・ビス 2010年
玉村のどか / Nodoka Tamamura
中延学園美術科在学中より、造形、絵画、ファッションなどを学び
平行して独学で写真活動を開始。
マリアの心臓人形博物館を中心に活動。
ギャラリーアリスと豆の木ニューイヤーアリス展最優秀賞受賞。
2013年7月アリスと豆の木にて個展オブラート開催
Barbara Cortili
グラフィックデザイナー兼カメラマン。イタリア在住。
セント・マーティンス美術工芸大学(ロンドン)入学、2011年にMomographica、Graphic DesignとPhotography Studioを設立。
2011年9月映画「i misteri del Chiostro」(Fondazione Museo Diocesano di Brescia)の公式カメラマンに認定。
Design Festa vol.36, に参加。清水真理の人形を使用したミニコミ誌「Little Women」プロジェクトによる本を出版。
・清水真理アニメーション作品上映
・清水真理・船本恵太・アビエタージュのコラボレートによる人形アニメーション
「鏡を通り抜け、そこで少女が見たものは」上映(2012年、5分16秒)
スチルのパネル展示もございます。
・清水真理・船本恵太・川村徹雄のコラボレートによる3D立体視ファントグラム人形アニメーション
「ファントグラムショー」体験コーナー(2012年制作)
3D立体視映像で清水真理の人形が動きます。
セイクリッド・ダークネス 「聖なる闇を掻き分けて」
相馬 俊樹(美術評論家)
斬首され、肉の一部を剥ぎ取られて、無残に転がる生首の山。残忍な切断の反復の果てに、臓腑までをも抉られて放擲される肉の塊。清水真理の人形作品は、これら、凄惨なる死の腐臭を纏った身体の断片から始まった。それらはすべて、再び元の姿に戻る希望を剥奪されていた。だが、はたして、人の形を回復する必要などあったのであろうか。やがて、血肉の断片群は人形作家を殉教者の聖なる肉片、すなわち聖遺物の黒い記憶へと導くのである。肉体を切り刻んだ刃は、あるいは超越的な力のあらわれであったのかもしれない。
後に展開されるフリークス人形においても、彼らが醜怪な肉の過剰を癒されることは、残念ながら望めそうもない。だが、やはり、治癒の必要などないのではなかろうか。生まれながらにして与えられたヒトガタの歪みは、選ばれし者の証、聖なる闇の痕跡である。
清水真理は、常に闇の聖域にいざなわれてきた。
今、彼女は再度ヒトガタの腹を割き、臓腑を掻き分け、聖なる闇を血塗れの手で探る。闇の深奥に秘められた光のヴィジョンを、闇の彼方に燃えあがる神秘の光芒を求めて。
清水真理は胎の内に、まだ見ぬ天界のゲートを開くため、驚異のヒトガタを創造し続けるだろう。